神澤先生の子育てコラム☆

ひなたぼっこでは、子育て勉強会などでシュタイナー教育についてや、日々の子育てのヒントなどを学ぶ機会がたくさんあります。

いつ聞いても、先生のお話は目からうろこの大変興味深いものばかりです。

 

子育て中の方にぜひ聞いてもらいたい内容ばかりなので、ここHP上でその一部でもご紹介していけたらと思います。

 

 

第1回のテーマ

「子どもの育ちにとっての親子作業について」

by里山保育ひなたぼっこ 神澤真江先生

園舎や森の広場など、周辺の環境づくりに、保護者の方々がそれはそれは多くの時間と手間をかけているひなたぼっこ。

幼い子どもたちが安心して活動するための環境づくりは親として楽しい時もあれば、時に何でこんなことまでしなくてはならないのか…といったような義務感を持つことも多々あるのではないかと思います。

 

子ども達にとってのよりよい環境づくりのために大人たちが一生懸命に話し合いを重ねている傍らで、

その話を遊びながら小耳に挟んで聴いている子どもたちの姿があります。

また、親子作業の折には汗水流して一生懸命に働くお父さん、お母さんの姿を子どもたちは横目で見ています

親御さんたちが子ども達のことを思って立ち働くその姿は、子どもの育ちにとって、実はとてもいい効果をもたらします。

たくさんの効果の中から3つをとりあげ、皆さんと共有したいと思います。

 

まずひとつめ。

『家』は家族が暮らす器であり、家族みんなの魂が宿る大きな体です。『健全な体に健全な魂が宿る』と言われているように、家を大切に想いながら整然と暮らし、住みやすくしていくことは家族の健やかなる魂を育みます。

いわば『家』そのものが『愛情の覆い』となって家族に安心感をもたらします。

どこかへ旅行に行って帰宅した時に『あ~やっぱり家はいいな~』とつい言ってしまうのは、隅々まで自分たちの愛情の意識がいきわたり、身体に心地よくなじんだ我が家だからこそです。

“ひなたぼっこという大きな体”の手入れを保護者の方々にして頂くことで、ひなたぼっこも我が家のような安心感に満たされた器となります。その「愛情の覆い」が子ども達の健やかなる心と絆を育み、その熱き想いの空間に守られていることで大きなケガをすることもなく、安心して活動することが出来ているのだと思います。

 

そして、ふたつめ。

お父さんが木でベンチを作れば、「これは○○くんのおとうさんが作ったんだよね~」とか、「このお人形はうちのお母さんが作ってた」など、子ども達はお父さんの働きぶりに驚いたり、お母さんの活躍ぶりを誇らしげに感じたりしながら、様々な人の愛情をいろんな形で受け止めています。

だからひなたぼっこのおもちゃに対して子ども達は特別な意識を持っています。

使っている物たちがより身近に感じられるのか、共有物であるにもかかわらず愛着をもってそれらと関わりを持っています。

それは自分たちの良く知っているお父さん、お母さんの息のかかったものだからだと思います。

無機質な物は人の手を入れ意識の息を吹きかけることにより、それは有機的な働きを持つ物になります。

椅子やタオルかけお着替えを入れるカゴ、画板などなど、自分たちが使っているものがどのようにして作られ、どのように手入れをしていくのか・・・作られる工程をよく知っている子ども達。

普段から椅子にワックスをかけたりして、子ども達自身も様々な物を有機的な物としてとらえ、大切に扱うこと、それをごく当たり前に感じています。

 

最後にみっつめ。

昔の人々は、身の回りにある自然物を利用して様々な道具を手作りしてきました。

必要なものはお金を出して買うことが当たり前になっている今の時代、こんなものがあったらいいな、と思った時に、お金がなくても自分の手作業でなんとか作り出せるかも!という感覚を持っていてもらいたいものです。

時間と労力をかけ、創意・工夫を凝らして思いを形にしていくことは、将来的にまるで夢をひとつひとつ実現していくような、人生を自らの力で切り開こうとするような、そのような生きる力のもとになるのではないかと思います。

子ども達の目の前で必要なものを手作りしている大人達の姿があるということは、そういった感覚を子ども達にもたらします。

 

また、手作りをしたものは壊れた時に修理が可能です。プラスチックで加工されたものや電子基盤が組み込まれたものは一般人には修理不可能です。使えなくなったら捨てるしかありません。けれども手作りの物を直してまた使えるようにしてもらった経験を何度もしている子どもは、むやみに捨てたりしません。まず修理できるかを考えます。

修理のできるお父さんは子どもにとっては憧れです。修理をするということは、作られている仕組みに注目することであり、物事をよく観察して見極める力が必要です。

幼いころにいろんな物を修理してもらっている子は、ゆくゆくは自分自身の力で修理してみようと考え、様々なことにチャレンジします。

“物は壊れても直せる”と思える子は様々な物事においても、失敗してもやり直しができる、またやり直せばいいんだ、などと受け止められる柔軟な心を持つようになります。

 

我が家のような安心感を子ども達にもたらし、物に対して愛着を持って大事に扱う繊細さを身につけさせ、必要なものは自分の手を使って作り出そうとするチャレンジ精神と、失敗してもやり直せる!という不朽の精神を育む親子作業…

やらない手はないと思いませんか?お家でも生活に必要な手作業はぜひお子さんの遊んでいる傍らでやってあげてください。